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2022.03.15

「畳」の文化と伝統を伝えるため、たたみの松本ができること。


はじめまして。「たたみの松本」副社長の今井キヨと申します。
大正10年に創業した当社は、昨年創業100年を迎えました。これもひとえに、私たちを支えてくださった、地域のみなさまのおかげだと考えております。

私たちは今までも、これから先も、日本が育んだ「畳」という素晴らしい文化を受け継ぎ、多くの方々にその魅力を知って頂きたいという想いで、お仕事をさせていただいております。
 
そんな私たちの考えや取り組みなどを、今後この「松本の“たたみ通信”」という場で定期的に発信をして参りますので、少しでも興味を持っていただけましたら幸いでございます。
 
たたみの松本では、今までも「畳の文化」を次の世代に伝えるため、会社として様々な取り組みをして参りました。第1回目の今回は、そんな私たちの取り組みの紹介とあわせて、畳の魅力に触れていただければと思います。

日本が生んだ、固有の伝統文化「畳」

 
日本には中国由来の文化が多い中で、畳は日本が生んだ固有の文化です。その歴史は平安時代までさかのぼり、当初は今のように部屋全体に敷き詰めるものではなく、座るときや、寝るときに敷く用途だったようです。現代でも販売されている「置き畳」のイメージに近いかもしれませんが、当時は大きさや縁の柄などで、身分を示す役割もあったそうです。(※部屋に敷き詰められるようになったのは、鎌倉~室町時代)
 
畳の歴史を振り返ると、それだけで大変な長さになってしまうので、これくらいにします。

畳が生み出す、リラクゼーション効果

 
さて、そんな伝統のある畳の魅力とは、どのようなことだと思いますか?
私が長年畳に触れる中で感じているのは「リラックス効果」があるということです。
 
何より「い草」の香り。これにはアロマセラピーのような効果があります。
さらには集中力を高める効果もあり、畳の部屋で勉強した子どもの成績がアップしたという研究結果もあるほどです。(※北九州市立大学の森田准教授の研究で明らかになりました)
 
また、畳に座って一息つく、というのも、忙しい現代人に忘れがちな習慣です。
子どもの頃は、何か悪さをすれば、父に「そこに座りなさい」なんて言われて、畳に正座をして叱られたものです。そういうこともふまえると、「畳に座る」というのは、1つの精神統一の手段でもあるのかもしれませんね。
 
さらに言えば、伝統文化である「生花」や「お茶」も畳の上で行うものですから、それらの美しい所作や、日本人のマナーを大切にする精神も「畳」からきているのではないかとも思うのです。
 
もしかすると、今の若い方は「畳」を古いものだと感じてしまうかもしれません。ですが、忙しくて、ストレスフルな若い世代にこそ、畳に触れることのメリットが大きいのではないかと考えています。

衝撃を吸収し、保温性も高いから、老後も快適!

 
畳には、転んだときの衝撃を吸収する効果もあります。柔道も畳の上で行いますよね。(現在の「柔道畳」は、普通の部屋に敷く畳とは違い、もっと衝撃を吸収できる特殊なものに変わっています)
 
高齢になると足腰が痛くなり、毎日の布団からの寝起きも大変になるため、寝具をベッドに変更する方も珍しくありません。その際に、床もフローリングにする方もいらっしゃいますが、畳のほうが衝撃を吸収するので、ケガをしにくいと言われています。
 
また、畳自体が滑りにくいので、転倒リスクそのものが軽減できます。九州大学福祉人間工学研究室と(株)イケヒコ・コーポレーションとの共同研究で、畳の床材はフローリングやカーペットより、高齢者が歩きやすく、つまずきにくいという結果も出たそうです。
しかも現代では、い草以外の様々な素材の畳がありますから、万が一の失禁などがあった場合のお手入れの心配もいりません。抗菌のものや、消毒がしやすいものまで、ライフスタイルによって選べるものはたくさんあります。

足触りもヒンヤリとはせず、保温性・断熱性にも優れているので、高齢になっても、やっぱり「畳」は良いものだと思います。

「畳って見たことない!」と言う子どもたち


語っても語りつくせない魅力ある畳。
しかし、「畳業界」は今や斜陽産業と呼ばれ、非常に苦しい中におります。
その要因の1つには、まだまだ「畳」について、知っていただけていない現状があるのではないかと思うのです。
日本古来の素晴らしい「畳」の文化が廃れてしまうのは、大変寂しいことです。
 
だからこそ「たたみの松本」では、通常の業務とは別で「畳の魅力を伝える取り組み」に力を入れています。
 
当社は年に1回、近隣の桜小学校2年生による「まちなか探検」を受け入れています。畳を作る風景を見てもらったり、紙芝居を使って、畳の歴史や良さを知ってもらったりしています。



子どもの中には「畳って見たことない!」と興味津々になってくれる子も。

「畳を見たことがない」という事実には驚きましたが、畳の文化を次の世代に受け継ぐためには、子どもたちにもっと知ってもらうことが大切なのだと考えています。



「まちなか探検」に来てくれた子どもたちがくれたお手紙は、宝物です。
(会社名が「松本畳工業」となっているのは、学校さん側で、昔の社名から更新されていないためです)

子どもたちの健康を願う「黄ぶな」の縁をつかった畳を寄贈


また最近では、宇都宮市大谷保育園の畳を無償で張替えさせていただきました。当社では「このようなコロナ禍も、子どもたちに元気で乗り越えて欲しい」という願いを込めて、スタッフがデザインした「黄ぶな」柄の縁(へり)を使った畳を寄贈しています。



黄ぶなは、昔宇都宮で天然痘が流行したときに、田川で釣った黄色いフナを病人に食べさせたという伝説からきています。しかし黄ぶなは簡単には釣れないことから、張り子の黄ぶなを作り、無病息災を願う慣習ができたと言い、市の郷土玩具としても有名です。

畳は、乳幼児がお昼寝するときも快適ですし、遊んだり転んだりしてもケガをしにくいので、子どもたちはもちろん、先生や親御さんにも安心していただければと思っています。



保育園の皆さんが喜んでくれただけでなく、市から感謝状をいただきました。

ほかにも老人ホームへの寄贈や、神社の無償での畳替えなども行っています。

これらは、畳の文化を伝えるだけではなく「私たちが商売をできているのは地域の方のおかげ」という感謝の気持ちでやらせていただいております。

これって本当に畳?端材を活用したワークショップ


畳には、床材以外の活用方法もあります。
身近なところから畳に触れてもらおうと、毎月第二土曜日に、ワークショップを開催しています。
畳の張替えで余った「畳表(たたみおもて)」や「畳縁(たたみべり)」を使って、ミニ畳や小物・雑貨などを作る「もの作り体験」です。

今や「畳表(たたみおもて)」も、昔ながらのい草だけではなく、様々なカラーがありますし、い草とポリプロピレンのハイブリットなどもあります。



また「畳縁(たたみべり)」の種類も豊富で、可愛らしいモダンな柄からクールなものまで、本当に畳の縁なの?と思えるようなものがたくさんありますから、工夫次第で様々なものを作ることができます。

ちなみに2019年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」で、広瀬すずさんが付けていたカチューシャは「畳縁(たたみべり)」を使ったものなんですよ。

当社のワークショップでも再現してみました。



普通だったら破棄してしまう端材を、新たな作品に生まれ変わらせることは、SDGsへの取り組みでもあると考えています。

ワークショップに来てくださった方に、なんとしても畳を売ろう!という営業心は微塵もありません。(もちろん、それをきっかけにご注文いただけたら、心から有り難いですが…)
それよりも、まずは「畳」を身近に感じてもらって、「こんなに種類があるんだ!」とか「畳っていいな」と思っていただけたら、それが何より嬉しいことだと思っています。



ワークショップのお知らせは、ホームページの「新着情報」に随時掲載していますので、興味のある方はご覧いただければと思います。

今があるのは、地域のみなさまのおかげ


当社が100年以上も商売を続けてこられたのは、本当に地域のみなさまのおかげです。
今までお話した取り組みは、畳の文化を伝えるという目的だけでなく、地域のみなさまへの感謝の想いで行ってきた面もあります。

そのため、近所の方たちに喜んでもらえる「駄菓子屋さん」や、孤立しがちな高齢者のコミュニケーションの場としての「お年寄りサロン」、青少年の居場所を作る「友達の家 和みルーム」など、畳に関連しない取り組みも幅広く行っております。それもまた別の機会で詳しくご紹介できたらと思います。

畳の魅力は無限大!


最近の畳は、デザイン性も材質も、かなり多種多様です。洋風の家にも合うような縁のない真四角なものもあります。和室として1部屋作らなくても、リビングの1画に小上がりの畳スペースを設ける方も多いです。少しのスペースでも、畳の上で、足を伸ばしてくつろげる場所があるのは良いものです。

たたみの松本では、ライフスタイルに合わせた「畳」の使い方をアドバイスしています。
ご家族構成や、生活のリズムによって、最適な機能を持った畳がありますし、お客様の好みやイメージに合わせた「デザイン畳」のご提案も可能です。

余談ですが、私の自宅は全部屋の床が「畳」です。よく驚かれますが、浴室の床やトイレの床まで、畳なのです。用途に応じた化学表は、天然い草に比べて100%に近い洗浄率なので、畳の良さを感じながらも衛生的です。

こちらがトイレの写真です。
汚れが落ちやすく丸ごと水洗いが可能な樹脂製畳表を使用しております。



↓廊下まで畳です。



「畳」の魅力には、まだまだ知られていないものが、たくさんあると思っています。

まだ「畳を買いたい!」と思っていなくても、“ちょっと興味がある”とか、“一旦色々見てみたい”などでも大丈夫です。少しでも、畳の魅力を知っていただくだけでも十分ですし、当社には、ショールームもありますので、お気軽に遊びに来ていただければと思います。

当社の「畳ライフスタイリスト」へお気軽にご相談ください。